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29.夫婦喧嘩

開腹して手術した場合、特に体がんは、術前に告げられたステージはあくまでも予想であり、実際のステージは、オペで摘出したものからたくさんの標本を作り、病理検査で詳しく調べてステージ確定するのだとDrから聞かされていた。

今までいろいろと検査し、手術もしたが、それは裁判で言えば、罪状認否だの冒頭陳述だの論告求刑に過ぎない。
病理の結果が判決みたいなものだ。
その結果次第では、抗ガン剤などの後治療をすることになるかもしれない。
病理検査は作業にかなり時間がかかるので、結果が出るのは早くてもオペの10日から半月後になるでしょう、もっとかかるかもしれませんとのことだった。


ゴールデンウィークが近づくと、私もお姉さんもそわそわし始めた。
もうすぐ、その「半月」がやって来る。
私は、術前のステージ予想では初期と言われていたので、漠然と、0期か、行ってもせいぜい1a期ぐらいなんだろうなと考えていた。
手術の夜、Drから「目に見える転移はありませんでした」と言われていたけれど、早く確証が欲しい!

なぎさ病院では、子宮筋腫などの病気で子宮のみ摘出した患者さんだと術後10日程度で退院になるので、みんな病理の結果が出ないまま退院して行き、外来診察に来て結果を聞いていた。
私は、腹部の左ドレンが取れないという理由で、まだ退院させてもらえない。
この分だと入院中に病理の結果が出るかもしれない。
外来の予約を取り、結果を聞くためだけに病院へ来て…という面倒は省けそうだ。


4月の末になって、Dr.パンダから「5月初めに病理の結果が出るので、○日に面談をしたい。ご家族も加わりたいでしょうから、連絡を取って来てもらって下さい」と言われた。
この年のゴールデンウィークは飛び石で、Drの指定した日時はゴールデンウイーク中の平日の夕方だった。
休日の面談はダメだと言う。Drも休みを取りたいのだろう。
私の1週間後にオペしたお姉さんの病理結果も同じ日に出るというのがちょっと不思議ではあったが、ゴールデンウィークだから検査の人の休暇などが関係しているのかもしれない。


翌日は休日で、夫がお見舞いに来てくれた。
私は手術から10日位経ち、抜鈎も済んだのでかなり身軽になった。
彼の目には、だいぶ元気そうに映ることだろう。

病院へ夫が来たのは4回目。
入院当日、手術当日、その翌日に来てくれたきりだったので少々不満ではあったが、夫の職場と病院はちょっと離れている。しかも、彼の仕事は残業が多い。
私が入院中は、家事全般も彼が一人でやっているわけだし、「会いに来て!」とわがままを言って負担をかけたくなかった。

私の病気はこれからどうなるか、まだわからない。
私が急変したりして、夫が突発的な休みを取らざるを得ない場合だってあるかもしれない。
もし私が死んだとしても、彼は生きて行かなければならない。そのためには仕事が必要だ。
私のことで夫の会社にあまり迷惑をかけるわけにはいかないので、休みは「いざという時」のために取っておいて欲しいと思っていた。
夫が仕事を休んだり、早退して見舞ってくれるのは望まなかった。
私がいるのは婦人科病棟だから、患者の家族とはいえ、夫は居心地悪いだろうし…。
私は、自分が「物わかりのいい妻」のつもりだった。


さてその日、病院へ来た夫に廊下で会った私は言った。

「○日の夕方5時半に先生から病理の結果が聞けるので、来てくれない?」

夫の会社の終業時間は、就業規則では午後5時だった。
5時半へ病院に来るには早退してもらわなければならないけれど、時間通りに退社できたことなんて皆無に等しいし、早朝出勤や連日のような残業など、会社には今までさんざんご奉公してきたのだから、そのぐらい認められるだろうな、なんて私は気軽に考えていた。

「ああ、ごめん。その日は夕方から打ち合わせが入ってるので来られない。悪いけど、ぴょんぴょん一人で聞いてくれない?」

何てこと!
退屈しているので会いに来いって言ってるんじゃないんだよっ!
病理の結果が出るの。判決が出るんだよ!!
悪い話かもしれないんだよ。それ、わかってる?
あんたは、女房の病気より仕事を優先させるのかいっ?!
私って、その程度なの?
私のこと、心配じゃないの?

夫が即座に「来られない」と言ったことも、私の気に障った。
最終的には断るにしろ、「相談してみる」とか「調整してみる」とか、他に言い方ないの?

病理の結果を一人で聞いたら、それを夫に伝えるのは私の役目になる。
医学用語、検査の結果、病院側が示すこれからの治療に関して、夫だけが疑問を持つ部分だってあるかもしれない。そういう事柄を私がうまく説明できるとは思えなかった。
夫の質問に私が答えられなければ、夫はいらだつだろう。
Drとは、そう頻繁に面談できるものでもない。
病理結果の面談は「いざという時」なのに、夫は全然わかっちゃいないようなのだ。

何だか無性に腹が立ってきて、今まで自分が納得していたはずの夫の行動や、夫はやってくれると言ったのに私が断ったことすらも、怒りの対象になった。

術前の検査の時、夫は付き添ってくれなかった。他の人には付き添いがいたのに。
手術前、「もう浣腸は終わったの?」と聞かれて悔しかった。
手術室に入る直前、私に対する夫の態度は冷たかった。
夫はあまりお見舞いに来ない。他の患者さんの旦那さんは毎日のように来るのに。
洗濯だって、術後すぐの痛みを我慢して自分でやってる。他の患者さんは家族がやってくれているのに。
入院費も、私が自分で会計に行って払っている。普通は家族が払いに来てくれるのに。

自分が「くれない族」になっちゃうなんて考えたこともなかったけれど、その時の私は、まさに「くれない族」化していた。
とにかく腹が立って腹が立って、ちょうど廊下を通りがかったナースを呼び止め、夫を指さして叫んだ。

「ちょっと聞いてよ。このバカタレは、病理の結果が出る日、仕事で来られないって言うのよ!!」

ナースは、困ったような微笑を浮かべて行ってしまった。
そりゃそうだよね。
夫と私は夫婦喧嘩をしているのだ。怒ってるのは私だけなんだけどさ。
首を突っ込みたい人はいないだろう。

公衆の面前でバカ呼ばわりされた夫は一瞬驚いた顔をしたが、私の剣幕に恐れをなしたのか、私の身体を気遣ったのか、言い返しはしなかった。苦笑は浮かべていたけど…。
そして私は、恐ろしいことに気がついた。

この人は、もし私が動けなくなったら、それでも面倒をみてくれるのだろうか?
私自身の世話は施設などにお願いするとしても、各種の支払いや、私の親戚の慶弔の付き合いなどをやってくれるのだろうか、たまには見舞いに来てくれるのだろうかと心配になった。
そして、私がどう頑張っても自分ではできないこと、私の葬式の采配を、この人はやってくれるのだろうか?
私の人生を左右するかもしれない病理結果の面談なのに、一瞬の躊躇もせずに仕事を選ぶ人なんだから、動けなくなった私なんて放り出しちゃうんだろうか?
私は恐る恐る尋ねた。

「ねぇ…。もしも私が死んだら、その時ぐらいは仕事を休んで、葬式ぐらいは出してもらえるんだよね?」

夫は「えっ?!」と、かなり驚いた顔をした。


次の日、心を入れ替えた(?)夫が病院に来て、「仕事の打ち合わせは他の人に頼んだので、病理結果の面談に出られるようになった」と言った。


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