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12.術後1日目

朝になり、一番初めに思ったのは「身体が痛い!」ということ。
私の場合は傷そのものより、背中全体、特に「お尻のほっぺた」周辺がとても痛かった。
上を向いて寝ている時、一番圧迫される部分なのだろう。
何とか楽になる方法を見つけたいと思ったが、「寝返りをうっていい」という許可はまだ出ていない。
しかたがないので、ちょっとずつ身体を動かして、もぞもぞしていた。
お尻を少し浮かすと血流がよくなるためか、尾てい骨周辺がじんじんした。


朝の検温の時間になり、ナースが回って来た。
私の血圧は上が80でちょっと低いが、その状態で安定していて、熱は平熱とのことだった。
ゆうべは38度近くまで熱があったこと、利尿剤が効いて尿が出るようになったことを教えてくれた。
第一関門は突破したみたい。

朝8時頃、ヘルパーさんが来て、冷たい水を口に含ませてくれ、うがいさせてくれた。
点滴で水分補給しているせいか、喉の乾きは感じられなかったが、水の冷たさが心地よかった。
温かいタオルで顔も拭いてくれた。さっぱりした気分になった。

それから、「今日は起き上がってはいけないが、寝返りはうっていい。床擦れにならないよう、左右に寝返りをうつように」と申し渡された。
大喜びで、寝返りをうとうと試みた。
ところが…。
お腹に力を入れずに身体を動かすことがこんなに大変だったなんて!
ベッド柵につかまり、腕の力だけで身体を横にすることになる。
そして、その姿勢を保持するためには、ずっと柵にしがみついていなければならなかった。

やっとのことで身体を横向きにしても、しばらくすると下になった肩や腰骨が堅いベッドにゴリゴリとあたり、じんじん痛み出すのでまいった。
苦労して仰向けの状態に戻り、逆方向のベッド柵にしがみつく、その繰り返し。
ベッドに横になっていても睡眠を取るような状態ではなく、いつもうとうとしていた。


午後近くなってからはお腹の傷本体も痛み出し、その度に、硬膜外麻酔の追加ボタンを押した。
お腹を強く押されているような感じの痛みだったが、麻酔の追加ボタンを押すと、痛みは速やかに薄れた。

午後の面会時間に夫と姑が前後して来てくれ、30分ほどで帰って行った。
私にはさすがに話をする元気がなく、口を開けば「痛い」という言葉しか出て来そうになかった。
他人がどうしようもできないことを訴えてもしかたないので、夫と姑をほったらかし、布団をかぶって寝ていた。


夕方、麻酔科のDrらしき人が来て、背中に付けられていた硬膜外麻酔を外した。
これからは、痛かったら申告して、注射か座薬か飲み薬を処方してもらうことになる。
硬膜外麻酔を外してからも痛かったのだけれど、どのくらい痛かったら薬を要求していいのかがわからない。
痛いと言って「大袈裟な患者だ」と思われるのもイヤだったので、ひたすら我慢して寝ていた。
結局痛み止めは使わなかったけれど、今思えば、あんなに我慢する必要なかったんじゃないかとも思う。

術後1日目は、堅いベッドによる身体の痛みと、手術の傷の痛みのダブルパンチで、入院生活中、一番痛かった日だった。


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