20.お姉さんとの出会い
深夜、きりんさんが個室へと運び出されて行き、その後いろいろと考えていたら眠れなくなってしまった。
白々と夜が明け始めた頃、退屈をもてあましたので煙草でも吸おうかと病室から出た私は、きりんさんの旦那さんが所在なさげにデイルームに座っているのを見つけた。
旦那さんは昨夜、病院から呼び出しを受けたのだろう。
きりんさんの状態は、かなり厳しいのかもしれない。
私は、旦那さんに向かって軽く会釈し、その場を立ち去った。
「きりんさんの具合はどうですか?」などと聞ける雰囲気ではなかった。
その日、朝食が終わると、今まできりんさんのいたベッドに新しい患者さんが入って来た。
年齢的には、私より少し年上の「お姉さん」に見えたのだが、後で実は一回りぐらい違うと分かった。
独身で子供のいない彼女は若々しかった。
お姉さんのオペは、私のちょうど1週間後だったと聞いた。まだ24時間の点滴付きで、鼻からもチューブを出している。
胃液を排出するチューブで、それが取れるまでは飲食ともに禁止なのだそうだ。
お姉さんは、時間のかかる手術を受け、しかも術後日が浅いので動けないが、言うことはちゃきちゃきだった。
そして、彼女の病名も体がんだった。
同じ病気でも、お姉さんは鼻からチューブを出している。私にはその経験はない。
私はリンパ郭清している。お姉さんは郭清していない。
受ける治療は人によって違うんだな〜とつくづく思った。
一回り離れているとは言え、私もお姉さんもこの病室では若い部類で、同じ病気、ほぼ同じ時期のオペ。
それ以来、すっかり仲良くなった私たちは、後々、二人でいろいろな経験をすることになる。
同じ時期に出る病理の結果を待ちわびて二人で一喜一憂したり、お互い喫煙者だったこともあって、朝も早いうちから退屈なベッドを抜け出して喫煙所でおしゃべりしたり、ちょっとしたことで笑いあったりしたっけ。
病理の結果が出た後、お互いの治療、お互いの将来は大きく異なってしまったけれど…。
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