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13.術後2日目

朝の検温異状なし。
朝食のワゴン車が廊下を通ると、食べ物の匂いが漂って来た。
私はまだ、食事も飲水も許可してもらえないが、点滴しているため、空腹感も喉の乾きも感じなかった。
入院患者の朝食が終わると、ナースがやって来た。

「ぴょんぴょんさん、今日はベッドの上に起き上がっていいですよ。歩けるようなら、歩いてみてください」

「はーい。これはどうするんですか?」

私は、バルーン(尿管)と、お腹の左右から出ているリンパのドレン袋を指さした。
バルーンは長く入れておくと、膀胱が麻痺して排尿障害が起こることがあると聞いたことがあった。
術後、動けない期間が長い場合は、自分でトイレに行けないからから、バルーンは抜けない。
でも、私は動いていいと許可が出たのだ。
手術によって排尿に必要な神経が傷つくこともある。その場合は治るまでに、時間とリハビリトレーニングが必要だろう。
一刻も早くバルーンを抜いて、膀胱が麻痺するリスクを減らし、神経が傷ついていないかどうかを確かめたかった。
ナースはバルーンを抜き、「初めにトイレに行った後、ナースに必ず言ってください。残尿検査をします」と告げた。

それから、リンパのドレンを入れて持ち運ぶためという布製の袋をくれた。
リンパのドレン管は、一方の端がお腹の中に入っていて、もう一方の端に浸出液を溜める袋が付いていた。
そのまま歩き回ったら、浸出液の入った袋の重みでドレン管が引っ張られ、お腹から抜けてしまうかもしれない。
そこで、歩く時は布製の袋を首から下げ、その中にドレン袋を入れるのだという。
言われた通りにし、上からパジャマをかぶって隠した。
腹帯とドレン袋の相乗効果でお腹回りにボリュームが出て、妊婦さんみたいな体型になった。

そうこうしているうちに、明日、手術を受ける予定の患者さんが入院してきた。
みんな、点滴につながれた私のチューブ&妊婦姿を見てびっくりしたらしい。
さっきまでは、バルーンも入ってたんだよ〜ん。
私は同室の人と話す余裕はなく、向こうは向こうで手術を前に不安だったのだろう。
挨拶はしたが、今となってはみんなの顔も名前を思い出せないし、病名も知らない。
その後数日して、みんな部屋がバラバラになり、会うことはなかった。


起きる準備が整ったところで、今まで真っ平らだったベッドの頭部分を少し起こしてみた。
クラクラするかもしれないと警戒していたが、平気だった。
ベッドを起こしたり、また平らにしたりとウォーミングアップを繰り返しているうちに、トイレに行きたくなった。

私は、水分と栄養補給のための点滴に24時間つながれっぱなしだった。
電動ベッドの背の部分を目一杯起こし、床に足を降ろしてみた。
その状態で少し休んだ後、点滴台を杖代わりに立ち上がった。
少しでもお腹を動かしたり、腹筋に力を入れると激痛を感じる。
背を伸ばして立つと、お腹の傷が引っ張られて痛い!
腰を少し曲げ、手でお腹をかばい、「おばあちゃん」スタイルで点滴台にすがって、そろそろと歩いた。
すぐ隣のトイレに行くまで、信じられないくらい時間がかかった。
身体の胸から膝までの間が、自分のものではない感じがした。
特に、尾てい骨周辺と両足鼠蹊部が変だ。触っても、ぼんやりした感覚しかなかった。


やっとトイレに着き、ズボンを下げるのにさらに時間がかかり、便座に座るのにまたまた時間がかかった。
病院のトイレは、至るところに手すりが付いている。ありがたかった。
気の遠くなるような時間を費やした後、体勢は整った。
そして…。

「!! なにこれ?」

今まで通りの感覚では、おしっこが出ない!
下腹部のちょうど膀胱かなと思うあたりに麻痺したような部分があり、自分の意志とはうらはらに力が入らない。
圧迫したらどうかなと思ったが、術後2日目で傷を押すのはためらわれた。
あちこちの手すりにつかまり、身をよじったり腰を浮かせてみたり…。
最後は身体を2つ折りにして、うんうん唸った。
奮闘の結果、ちょろちょろっと水音がした時には本当にほっとした。
しかし、バルーンの抜き差しで尿道が傷ついているらしく、出初めにヒリヒリと熱く染みるような痛みを感じ、息が止まった。
それにつられて、水音も止まってしまった。
あ〜あ、また初めからやり直しだぁ。
再挑戦して出始めた尿は、「まだ出るの?」と自分でもびっくりするくらい溜まっていた。
出初めはやはり、尿道口付近に染みるような痛みがあり、その後、排尿している間中、膀胱付近にギュイーンとした痛みを感じた。
尿は、膀胱に少しずつ溜まっていく。
でも、出す時は一度だから、膀胱の大きさが急激に変わり、まわりの傷を刺激して痛いのかもしれないと思った。
そして最後。
人間は本能的に、排尿の終わりに腹筋へ力を入れるのかもしれない。
私も、自分では意識せずお腹に力を入れてしまった。

「いたたたたた」

すべてが終わった後、立ち上がる気力もなく、呆然と便座に座っていた。
排尿がこんなに大変なことだとは思わなかった。
初めての排便の時はどうなっちゃうんだろう?


やっとの思いでベッドに戻り、ナースコールを押した。
これから残尿を調べてもらわなければならない。
自分では全部排尿しているつもりでも、膀胱の麻痺や排尿に必要な筋肉、神経が傷ついていると、膀胱に残尿することがあるそうだ。
そして、残尿量が多いと細菌が繁殖して膀胱炎になったり、膀胱がいっぱいになったのがわからなかったりするらしい。
迎えに来てくれたナースと共に、処置室に向かった。
手術前は歩いて15秒で行けた処置室がはるか遠くに思われた。
またまた点滴台にすがり、腰を曲げてよろよろと歩いた。

処置室に着くと、内診台が待っていた。
普段なら何でもない行動の一つ一つがとにかく痛い。
内診台に上がるときの足の上げ下げやら、腰を下ろした時の衝撃がお腹の傷にビンビン響き、内診台に上った時には気絶寸前。
尿道に残尿検査のための管が入れられ、その痛みがとどめだった。

「うっわ〜、いった〜い!」

叫んだことで息が乱れ、腹筋に力が入り、さらに痛みが増した。
ナースは残尿を取った袋を見せてくれ、「残尿はほとんどないから、大丈夫です。これからは残尿検査はしません」と言った。
さて、内診台を降り、身支度をして、病室に帰らなければならない。
でも私はもう、意地でも動けなかった。
ナースに助けてもらい、長い時間をかけて半べそ状態で立ち上がると、足がブルブル震えていた。
お腹の傷を初め、首から下がすべて痛くて、ちょっとでも動いたらさらに激痛が襲ってくる。

棒のように突っ立っている私を見て、ナースが下着をはかせてくれ、車椅子を持って来た。
しかし、車椅子に座り、病室まで連れて行ってもらい、椅子からまた立ち上がり、ベッドへ移るということは、お腹や腰を曲げたり伸ばしたりするわけで、そんなことは考えるだけでもイヤだった。

「このまま歩いて帰りますぅぅぅ」

ナースに寄りかかり、突っ立ったままの姿勢を崩さないよう、足だけを小刻みに動かすという変てこりんな格好でそろそろと歩いた。
なぜか左の肩や胸付近の骨が痛くて痛くて、息が乱れた。
そんな格好で廊下を進んでいたら、午前中の病室回診していたDr.パンダとDr.コアラにばったり会った。
Drコンビは、にこやかに話しかけて来た。

「ぴょんぴょんさん、具合どう?」

「はぁぁぁ、い・た・い…」

「どこが?」

「左の肩の骨とか胸…」

「そっか。初めはしょうがないよ」

それだけ言うと、Drたちは行ってしまった。
私自身は、特別な除痛治療が必要なんじゃないかと思うくらい痛かったが、Drから見たら、たいしたことないのだろう。

やっとのことでベッドに戻り、陸に上がった魚状態で、口をパクパクさせて寝ていた。
痛くて痛くて呼吸が整わず、やたらハアハアして、そのうち指先が痺れてきた。
過換気気味で発作を起こしかけているのかもしれない。
ヤバい…。
こういう時は袋を口に当て、自分の吐いた息を再び吸うといいとの知識はあったが、手近に袋はなかった。
ナースコールを握り締め、押そうかどうしようか迷っているうちに呼吸は徐々に落ち着いて来た。
大事に至らずよかった!


午後の面会時間が近づいて来たが、私のところへは、たぶん、だれ一人として来ないだろう。
親がいないということは、こういうことなんだと思いつつ、洗濯物をどうしようかと考えた。早く動けるようにならなくっちゃ…。

術後2日目は、トイレへ行って帰ると痛みと疲れで横になり、また催してトイレへ行くという、「トイレな1日」で終わった。
膀胱の感覚がヘンで、排尿が痛く、溜まっていく感じもよくわからない。
「行きたい時が出たい時」状態なので、漏らしちゃうんじゃないかとヒヤヒヤした。


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