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「がん告知」と「告知逃げ」

とある癌サイト掲示板にあった「親戚の人ががんになり、その場で告知されたそうです。どうして本人に言ってしまったんでしょう! 今ってそうなんですか?!」と、投稿者の怒りが少々感じられる投稿を見て、いろいろと考えた。

告知しないで治療する場合、もしもわたくしが患者の家族だったらどうするか。
例えば、わたくしの母が子宮がんになって、手術が必要だけれど、がん告知はしないことにする、と仮定しよう。

まず、がん以外の病名をつけるのは必須。
そして、他の患者との接触は一切できないようにする。
入院中は個室に入れ、わたくしも24時間ずっと付きっきりで「身内の介護」という名目の「監視」をする。

それはなぜか。

病院には、子宮がんを告知されて入院している人もいる。
その人たちとデイルームなどでお友達になった母が、話のついでに相手から「私は子宮がんなんです、あなたはどこが悪いの? 私と同じ点滴ね」なんて言われて、自分の病名に疑問を持ったら困る。
お見舞いの人に「私の知り合いはこうだったよ」とへんてこりんな知識を授けられるのも困る。
病院関係者を除き、誰にも会わせないようにしなくちゃ。

Drやナースにも、よくよく頼み込んで口裏を合わせてもらわねばならない。
たくさんの医療従事者がシフトを組んで働いているはずなので、どうやったら全員に話を通せるのか、頭が痛いところ。
うっかりヘンなことを言われないよう、これまた付きっきりで目を光らせていなくちゃならなさそう。
患者はちょっとしたことで感づいたりするから、本当に気が抜けない。

また、患者にカルテを持ち歩かせたり、比較的容易にカルテ開示に対応してくれる病院もあるので、偽の病名とその治療記録を記した表カルテと、本当の病名を記した裏カルテが必要になるかもしれない。
Drはそういうところ、協力してくれるのかなぁ?

母には、電話もインターネットも一切使わせないようにしなくちゃ。
テレビも見せられない。
がんがテーマの番組やってたら困るもん。
見て、感づいちゃったらヤバイもん。

新聞や、がんや子宮の病気に関する本も、絶対に読ませないように神経遣って排除しないとダメですね。
今は、情報が溢れている。
手術の詳細について記載されている情報もゴロゴロある。
そういうのを見て「自分の受けた手術って、子宮がんの手術方法と同じみたい?」と疑問を持たれたら困る。

「治療薬を使ったら気持ちが悪くなって吐き、脱毛した」「治療で放射線をあてた」と聞いて、だれもが思い浮かぶであろう病名は「がん」なので、もしも後治療が必要になった場合、本当の病名をどうやって隠し通せばいいかわからない。
なので、後治療は諦めるしかないかも…。

さて。
入院して個室に監禁(?)状態にされ、お見舞いの人は誰一人として来ない。
電話はかけられず、テレビは見られず、新聞も読めず、娘のぴょんぴょんが24時間ぴったり引っ付いている。
母は絶対に「何かがおかしい」と思うに違いない。
そこで、なぜお見舞いの人が来ないのかetc、彼女がすんなり納得する説明・言い訳をひねり出さねばならない。
親はわたくしより人生経験があるので、子供だましの話は通じないだろう。

患者に病名を隠し通すことを選んだ家族には、本当らしい嘘を即座にポンポンと作り出せる回転の早い頭脳と、個室代を払いきれる財力が要求されるみたい…。
そして、アカデミー賞ばりの演技力と、嘘をついているという良心の呵責に耐えられる強固な精神力も必要そうだ。

母は自分の病気を知らないのだから、治療法が複数ある場合でも、「どっちがいい?」と本人に意志確認はできない。
そこで、患者の命やQOLに関わる事柄を、他人であるわたくしが選択することになる。
その責任の重さも一手に引き受けることになる。

そして、いろいろと苦労しても、嘘がバレた時には、患者からの信頼は一気に失われる。
そこらへん、どうクリアするかな〜。

う〜ん。
わたくしが患者だったらやっぱり、包み隠さず告知していただいて構いませんので。
周囲が病名を隠すことに費やす労力、費用、精神力は、もっと別のことに使って欲しいきぼんぬ。
ってか、告知にもいろいろと問題はあると思うけれど、告知しないでがん治療する大変さに思いを馳せず、患者さんが受診する時に付いて行かなかった人が、身内が告知されたって怒るのも、よくわかんない…。

というわけで、今は情報化社会なので、がんを隠し通して治療するのはなかなか難しい。
けれど、何でも言っちゃっていいとも思えない。

告知しないケースとして、患者本人が健康な時に「自分ががんになっても告知しないでくれ!」と言っていた場合が考えられる。
そういう人はたぶん、抗がん剤で脱毛しても、放射線治療しても、周囲が語る嘘を信じるだろうて。
がんという事実には本人自ら背を向けるだろうから、詳細な説明も求めなさそう。
本人が一番怖いのは「がんです」と言われることなので、自分から藪をつつくことはしないような気がする。

本人が「自分はがんかもしれない」と思うことはあるだろう。
でも、周囲から「がんじゃない」と言われることに精神的安定や安心感を見出すのだろうし、本人のそもそもの希望が「告知しないで」だったので、わたくし的には、わざわざ告知する必要性を感じない。
いつか、本人が「本当のことを教えて」と言い出してから告知するのもアリ。
その方が患者の気持ちも落ち着いてて、告知を前向きにとらえることができるんじゃないかと思う。
まぁ、それは、病気になる前から告知について患者がはっきりと意思表明していた場合なので、ここでは置いとく。

わたくしが大問題だと思っているのは、日本におけるがん告知の、その後である。

今は「がん=死」という時代ではなくなった。
がんだったとしても、治療すれば治るケースも多い。
だから告知した上で、患者と医療従事者側が一体となってがんに立ち向かって行きましょう、と告知するようになったんだと思う。
と書くと聞こえはいいけれど、日本の現状は残念ながら、「告知逃げ」ですね。

情報化社会で隠し切れなくなったので、姑息(←あえてこう書く)に考えた結果、外国のいいところを中途半端に取り入れて、

外見(告知推進)はかっこよく作ってみました。
だけど中身(告知後のフォロー体制)はカラッポ〜。

みたいな。

患者はいきなり「あなたはがんですよ」と言われる。
ほとんどの人はびっくりするわけで。

欧米だと、告知後、半強制的に精神科医だかカウンセラーだかとの面接予約が入れられたりするらしい。
セカンドオピニオンを取りたいか?と聞かれたりすることもあるらしい。
子宮がんを例に挙げると「患部の治療は婦人科医がいたします。告知されてあなたもショックでしょうから、精神的なケアは精神科医の方でいたします。私の言っていること信じられないかもしれないから、セカンドオピニオンで他のDrの意見も聞いてみてくださいね」と、心身両面のケアがセットで提供されるらしい。

日本はほとんどの場合、婦人科医が「あなたはがんですよ」と言ったきり。
それって「私は言ったからね。あなた、聞きましたね? 身体の治療は私がしますので、その他のことは自分で何とかしてね。はい、次の方どうぞ」と逃げちゃってるように思える。
患者は、いきなり荒野に立たされたような、絶海の孤島に置き去りにされたような、「どうすりゃええの?」と途方に暮れた気分になるって。
そして、告知によって生じた患者の不安や疑問を解消する手段をほとんど提供しない、そのしわ寄せの一部が、うちのような患者サイトに来るんですわ。

以前、子宮がん告知されてかなりパニくった患者さんから「告知されました。不安で仕方ありません。こちらのサイトは主治医に教えてもらいました。これからいろいろと教えてください」と言われ、ぶっ飛んだ。
告知で生じた不都合は、告知した人がフォローしてくださいよ (ToT)
せんせい、お願いしますよ〜。
日本は、患者も医療従事者側も、まだ告知に慣れていないのかもしれないけれど、なんだかな〜。

レスする時、わたくしが一番苦しいのは、精神的に動揺が激しそうな患者さんの相談投稿。
ストレートに精神科や心療内科へ行けと答えると、ショックを受けたり誤解する患者さんもいるだろうから、えらく気を遣う。
なので、レスしなかったりする。
そうでもしないと、こっちの精神状態が危なくなりまする。

2番目に苦しいのは、「○○って何ですか?」という医学的な質問。
患者が聞かなかっただけなのか、医師が家族と相談の上で隠しているのかわからないので、質問の答えを知っていても、うかつに答えられない。
なので、レスしなかったりする。
なんやかや言ってもインターネットや患者サイトで治療はできないのだから、リアルにおける患者と主治医の信頼関係を損なうようなことはしたくない。

3番目に苦しいのは、「この患者さんは、レスのいい部分(または悪い部分)しか頭に入らないだろう」と思える人の投稿。
「心配することないと思うんですが、一応受診を」と書いたレスを「あなたは問題ない」と受け取られて、受診しなかったらマズい。
レスの悪い部分のみ突き詰めて受け取られ、超悲観的になられても困る。
なので、レスしなかったりする。
受診しなかったことが手遅れにつながったり、ノイローゼにでもなられて死亡者を出したら、後味悪すぎる。

「情報交換サイト」と銘打っているにも関らず、情報操作しているようで、気がとがめることがある。
自分の言動に整合性がないようで、ジレンマを感じることがある。
でも、そもそも患者サイトで対応すべきことではないような気が…。

と嘆いてばかりいてもしょうがない。
告知の問題点はわかっている。
「知りたかったら、主治医に食らいついて聞く」「メンタル的にヤバイと思ったら自分からさっさと受診」あたりが、現在の自衛策になってくるのでしょうね〜。

告知について、これからの改善を切に望みたいところ。

2004年8月   記
2006年6月 改定


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