医療ミスはこうして起きるのかも…と思った話 その1
ぴょんぴょんがまだ高校生だった頃。
胃が重苦しく、なんだか気持ちが悪い日々が続いたので、近所の病院へ行った。
内科の女医さんは、カルテを見て言った。
「妊娠していらっしゃるんじゃないかしら?」
がっびょーん!
椅子の上で、身体が固まった。
妊娠するようなことは、なーんにもしていなかった。
電車の吊り革からとか、お風呂で妊娠したか、寝ている間にレイプされたのかも知れないと、青くなった。
その頃の私が持っていた妊娠の知識は、そんなものだった。
「私が妊娠するんですか…。なんでぇ?!」
ぴょんぴょんのうろたえた質問に、女医さんはにっこりと返事した。
「でも、結婚していらっしゃるのだから…」
「ええっ?!」
どうも雲行きがおかしい。
よくよく話した結果、とんでもないことがわかった。
ぴょんぴょんは高校生で、父の扶養家族なので、保険証も父のを使っていた。
カルテを作る係の人が書き間違えて、ぴょんぴょんの続柄を父の「妻」と書いていた。
女医さんはそれを見て、この人は奥さんなんだから妊娠もあり得るだろうと判断したのだ。
その時は、カルテを訂正してもらい、笑い話で済んだ。
ぴょんぴょんの病気は胃炎と診断された。
しばらく経って、風邪を引き、またその病院へ行った。
今度は男性のお医者さんだった。
カルテを見ていた先生は開口一番、ぴょんぴょんに聞いた。
「ぴょんぴょんさん、その後、盲腸の傷の具合はどうですか?」
ぴょんぴょんは確かに盲腸をやっていたが、それはもう7年ぐらい前のことだったので、何でいまさらそんなことを聞くのだろうと不思議に思った。
「傷の具合はいいです。もう7年以上経ちますから」
お医者さんはびっくりしたように言った。
「ええっ? 3ヶ月前、ここで盲腸の手術したでしょ?」
今度はぴょんぴょんがびっくりする番だった。
「ええっ!!」
お医者さんは言った。
「あなた、ぴょんぴょんさんですよね?」
「はい!!」
診察室で、ぴょんぴょんとお医者さんは、お互いにびっくりし合っていた。
机の上のカルテをのぞき込み、「あっ!」と思った。
カルテの名前は合っている。
でも、生年月日も住所も違う。
ぴょんぴょんと同姓同名で年齢も近い人が、偶然この病院にかかっていたのだ。
「このカルテ、私のじゃありません!」
この時、人違いって怖いなぁと思った。
「同姓同名」さんが特別な薬を使う治療でも受けていたとしたら?
そして、先生がぴょんぴょんのことを「同姓同名」さんと信じきって、その薬をぴょんぴょんに使ったとしたら?
具合悪くなるだけでは済まないかもしれない…。
次にその病院へ行って診察室に入った時には、真っ先に机の上のカルテをのぞき込んだ。
はぁぁぁぁ〜。
先生が見ていたカルテは、ぴょんぴょんのではなく「同姓同名」さんのだった。
病院は、独自に患者番号などをつけて管理しているようだし、「保険証を見せろ」と口うるさく言うのに、なんでこういうことになるのだろう?
それ以来、その病院には行っていない。
そして他の病院でも、見えるところにカルテがおいてあると、必ず氏名と生年月日のところをチェックしている。
2001年3月4日 記
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